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「う~暇ッス!」
綺麗に整えられた芝生の上に寝っ転がり、気だるそうにしている赤毛の少女、次元犯罪者ジェイル・スカリエッティによって作られた戦闘機人の11番目である、ウェンディはこの日何度目かになる不満を漏らした。
「仕方ないだろ、ウェンディ。ある程度の自由が与えられてるとはいえ、私たちは犯罪者なんだ。このくらいの罰で済んでるんだからあまり贅沢を言うなよ。」
ウェンディの不満に、ぶっきらぼうに答えた赤毛の少女-こちらもスカリエッティによって造られた戦闘機人の9番目のノーヴェ-は読みかけの本に意識を集中させた。
彼女たちは、天才的な科学者であり、時空管理局に対する大規模なテロを働いた、Dr,ジェイル・スカリエッティによって造られた、戦闘機人である。彼によるテロは、時空管理局の古代遺物管理部機動六課の活躍によって阻止され、その結果、彼と彼に造られた戦闘機人の少女達は、管理局に逮捕された。
管理局に逮捕された戦闘機人の中でも、管理局の捜査に協力的で更正の意思のある一部の少女達は、肉体に平均的な女性程度の力が出せないように調整が加えられ、更正施設で人として生きる事を学び、社会生活が送れるようになる為の勉強をしている。ノーヴェやウェンディはこの更正組に含まれており、更正施設で勉強中なのである。しかし、いくら勉強中と言っても、暇な時間ができたりする。集中力が乏しく、じっとしておくことが苦手なウェンディは、このような暇な時間が出来ると、いつも暇だ暇だといっている。
「ところでノーヴェが本を読んでるなんて珍しいッスね。なに読んでるんッスか?」
博士の所には、本があったが、それらの本は難解な専門書や、教育用の戦術書ばかりでそれらの本は、ウーノやクアットロが読んだり、戦うための手段を学ぶための物で、ウェンディの中では「本を読む=ごちゃごちゃと小難しい事が書いてある死ぬほどつまらないもの」といった認識になっていた。それに自分と一緒で、本を読むということが嫌いなノーヴェが自ら進んで読書をしていると言う事に驚きながらも興味がわいたのだろう。
「ん、これか?これは「キ○の旅」っていうライトノベルだ。あまりに暇だったからチンク姉に借りてきた。」
「ライトノベル?どんな内容ッスか?」
ウェンディはノーヴェが自分の話に乗ってくれた事が嬉しくて、更に質問をしてみた。
「どんな内容って言われてもなぁ…まだ最初の方しか読んでないからまだよく分からないけど、主人公と喋るバイクが旅をしながらいろんな国をみて回る話かな。なかなか面白いぞ。」
「面白そうッスね~後で貸すッス!でもチンク姉はどうやってこんな本を手に入れたんでしょうかね…?」
そう、いくらここが更正施設だろうと、彼女達は犯罪者に変わりはない、したがってそう易々と外の世界に出ることはできない。さらに彼女達には差し入れをしてくれるような親しい人は居ない。
「確かチンク姉はギンガに持ってきてもらったって言ってたな」
「ギンガさんッスか~そういえば今日昼から来るみたいッスから頼んでみようかな・・・」
「あまり変なもの頼んでギンガを困らせるなよ。っとウェンディ、これでも読むか?」
そう言ってノーヴェはウェンディにまだ読んでいない、同じ作者の別の本を渡し、読書を再開した。ウェンディは、ノーヴェがこれ以上話しかけても反応しないと思い、貸してもらった本を読みはじめた。

「はい、今日の講義はここまでとします。今日の講義内容で何か質問がある人は居ませんか?」
ノーヴェとウェンディが読書を開始し、ノーヴェが一冊、ウェンディが半分ほど本を読み終わり、昼食をとった後、ナンバーズの更正教育担当のギンガが更正施設に現れた。彼女はナンバーズ更正組の教育係りであり、管理局の仕事に空きが出たときなど、こまめに更正施設を訪れ、ナンバーズの勉強を見たりしている。今日も午後からナンバーズの更正教育を行っていた。
「質問無いようでしたら、今日はこれで終わりますね。皆さん、お疲れさまでした。」
ギンガが講義終了の合図を出し、講義で使ったものをチンクの手伝いを借りて片付けていると、
「あの~ギンガさんちょっと良いッスか?」
と、不意にウェンディが声をかけてきた。普段、ウェンディは講義が終わるとしばらくは机に突っ伏しているのだが、今日はいつもと違い自らギンガに声をかけてきた。ギンガは、ウェンディが自ら進んで外の世界の事を学びたくなったのだなと思い、ウェンディが自ら学び始めたことに対する喜びと、自分の熱意が伝わった事への感動で満面の笑みでウェンディへと振り返った。
「あっ、ギンガさん、実はちょっと頼みたいことがあってですね・・・暇潰しになるような何かを差し入れてもらえないッスか?」
「えっと…暇潰しになりそうな何か?た、例えばどんなの?」
ギンガはウェンディが質問に来たのではなかったと言うことに若干残念がりながらも、それを顔に出すことなくウェンディに聞き返した。すると、ウェンディは若干悩む素振りを見せ、
「う~ん・・・本は私に合わないッスからねぇ…、やっぱり体動かせるのがイイッス」
「えぇっと・・・分かったわ、今度来るときに何か持ってきましょう。」
ギンガはウェンディの答えに笑顔でうなずきながら答えた。

「・・・ギンガ、本の差し入れやウェンディとの約束、本当にありがとう。妹たちを代表して礼を言わせてもらう。」
チンクは隣を歩くギンガに頭を下げた。
「あの、チンク、頭をあげてください。その・・・ですね、自分で何かをしようとする、という考えを持つようになるというのは、人間社会では重要な事なんです。ウェンディが自ら考えて何かをしようとするのを最大限お手伝いするのが教師役である私の役目ですから。それに、私やスバルとあなたたちは云わば姉妹みたいなものではありませんか。姉妹のためになることなら全力を尽くすだけです。少なくとも私はそう思ってますよ。」
ギンガは照れ臭そうにそう言うと、チンクから荷物を受け取り、部屋から出ていった。

それから3日後のギンガの講義日、朝からウェンディはそわそわしていた。いつも起床時間ギリギリまで寝ており、チンクに起こされているのに、その日は朝誰よりも早く起き、いつも以上に落ち着きがなかった。その様子を、他の姉妹たちはそんなウェンディの様子を呆れながらも和やかに見守っていた。
そして、ギンガの講義の時間になり、ギンガが来るとウェンディ一目散にギンガの元へ駆け寄ると、
「ギンガさん!ギンガさん!約束守ってくれたッスか?」
と早口で捲し立てた。目を輝かせ、ギンガにまとわりつくウェンディの姿はさながら子犬のようで、微笑ましくもあったが、その様子を見かねたチンクは、目でノーヴェに
「(ノーヴェ、さっさとあの馬鹿をどうにかしろ。ギンガが困ってる。)」
とアイコンタクトを送り、それに気がついたノーヴェはウェンディに近付き、
「いい加減にしろ!ギンガが困ってるだろ!」
と一喝し、頭を叩いた。そして、ノーヴェに頭を叩かれたウェンディが、席についたのを見届けて、ギンガは講義を開始した。



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